キリスト教ってどんな宗教?
イエス・キリストって誰? 聖書ってどんな本? 教会では何をしている? キリスト教をまったく知らない人向けに、いちばん短い言葉で説明します。
キリスト教って、名前は知っているけれど中身は知らない。たぶん、そういう人がほとんどです。
信じてもらうために書いているわけではありません。ただ、何も知らないままだと教会には入りにくい。その分だけ、先に知っておきましょう。
まずはこれだけ
- イエスという人を「救い主」と信じる宗教です
- いちばん大事にしているのは、イエスが十字架で死んで、3日後に生き返ったという出来事
- 世界でいちばん信じている人が多い宗教で、約23億人(世界人口の28.8%)
- 聖書は世界でいちばん売れている本(推定50〜70億部)
- 日曜日に集まって、歌って、話を聞いて、帰る。それが「礼拝」
これだけ知っていれば、教会に行っても困りません。
イエス・キリストって誰?
約2000年前、いまのイスラエルあたりに実在したとされる人です。
「とされる」と書きましたが、実在したこと自体は、歴史の研究ではほぼ確定扱いです。聖書の外側にも記録が残っているからです。たとえばイエスの死から80年ほどあと、ローマの歴史家タキトゥスが「キリストはローマの総督に処刑された」と書き残しています。この人はキリスト教徒ではなく、むしろキリスト教を嫌っていた側の人です。味方ではない書き手の記録にまで登場している——要するに、「本当にいた人なの?」という心配は、信じる・信じないとは別に、しなくていいということです。
「キリスト」は名字ではなく、「救い主」という意味の称号です。だから「イエス・キリスト」は「救い主であるイエス」という意味になります。
ちなみに、いまが「2026年」なのは、イエスの誕生を基準に数えた年号だからです。英語で紀元前をB.C.と書くのは Before Christ(キリスト以前)の略。カレンダーを見るたび、実は全人類がイエス基準で年を数えています(実際の誕生年とは数年ずれがあるとされていますが)。
イエスは30歳ごろから人々に教えを説きはじめ、3年ほどで捕らえられ、十字架にかけられて処刑されました。ここまでは、わりと普通の歴史の話に聞こえると思います。
キリスト教が「宗教」になるのは、この続きです。イエスは3日後に生き返った(復活した)——これを信じるのがキリスト教です。
信じると、どうなるの?
ここが一番気になるところだと思います。あくまでキリスト教が教えている中身として、客観的に書きます。
キリスト教の教えでは、人はもともと神から離れてしまっている状態にあります(これを「罪」と呼びます。法律違反のことではなく、関係が切れている状態のイメージです)。イエスが十字架で死んで復活したことで、それが赦され、神との関係が回復する。そして死んだあとも神とともに生きる(永遠の命)。これが信じる人に約束されている——というのがキリスト教の中心の教えです。
要するに、「切れていたつながりが戻って、ひとりではなくなる」という話です。
この知らせ自体を「福音」と呼びます。もとはギリシャ語で「良い知らせ」という意味の言葉で、音楽の「ゴスペル」も同じ単語です。ゴスペル音楽は「良い知らせ」を歌っている音楽、ということになります。
そしてもうひとつ、キリスト教は「愛」を中心に置いた宗教です。イエスは「いちばん大事な教えは何か」と聞かれたとき、「神を愛すること。そして、隣人を自分のように愛すること」と答えたと聖書に記録されています。聖書には「神は愛です」という言葉もあります。教会で「愛」という言葉が多く出てくるのは、飾りではなく、教えの中心がそこにあるからです。
つまり、信じる人にとって得られるとされるものは「赦し」「愛されているという実感」「神とのつながり」「死への希望」あたりです。信じている人たちがよく口にするのは、満たされるという感覚——何かを達成したからではなく、そのままで愛されていると知っている安心感だそうです。ご利益や成功を約束する教えではありません。
目に見える生活の変化は、もっと具体的です。日曜に礼拝へ行く。祈る習慣ができる。聖書を読む。教会という、世代も職業もばらばらな共同体に属する。結婚式や葬儀、子どもの誕生といった人生の節目に、儀式と支えがある。信じている人たちの生活は、だいたいこの形をしています。
信じるかどうかは、完全に自由です。教会は「まだ信じていない人」が来ることに慣れていて、何年通っても信じないままの人もいます。見学だけで帰っても、何の問題もありません。
聖書ってどんな本?
世界でいちばん売れている本です。ギネス世界記録は聖書を「Best-selling book」として認定していて、これまでに刷られた総数を50億〜70億部と推定しています。いまも年間8000万部くらいのペースで印刷され続けています。
中身は、一冊の本というより文書を集めた図書館のようなものです。大きく2つに分かれます。
- 旧約聖書 … イエスが生まれる前の、ユダヤ民族の歴史や詩や預言
- 新約聖書 … イエスの生涯と、その後の弟子たちの記録。全27巻
はじめて読むなら、新約聖書のはじめのほう、「福音書」(マタイ・マルコ・ルカ・ヨハネの4つ)がおすすめです。イエスが何を言って何をしたかが、物語として書かれています。
日本語訳は何種類かあります。書店で選ぶなら『聖書協会共同訳』か『新改訳2017』あたりが手に入りやすいです。
細かい話(読み飛ばしてOK) 旧約聖書の巻数は教派によって違います。プロテスタントは39巻(合計66巻)、カトリックは46巻(合計73巻)、正教会は教会ごとに異なります。「第二正典」「外典」と呼ばれる文書群を正典に含めるかどうかが分かれるためです。新約27巻だけは全教派で共通です。
教会って何をするところ?
日曜の朝に人が集まって、だいたい1時間〜1時間半、こんなことをしています。
- 歌う(賛美歌・聖歌)
- 聖書を読む
- 話を聞く(説教・メッセージ。20〜40分くらい)
- 祈る
- 献金の袋が回ってくる(任意。入れなくてもいい)
はじめての人がやることは、座って、まわりが立ったら立つ。それだけです。
呼び名は教派で違って、カトリックは「ミサ」、正教会は「聖体礼儀」、聖公会やプロテスタントは「礼拝」と言います。中身の骨格は同じです。
ただし、やり方は教会ごとにけっこう違います。歌が2曲の教会もあれば、バンド演奏が30分続く教会もある。気になるなら、まず一度行ってみるか、先に電話やメールで聞いてみるのが確実です。わからないことを聞けば、たいてい優しく教えてもらえます。
パンとぶどう酒が配られたら?
礼拝の中で、パンとぶどう酒(またはぶどうジュース)を配る儀式があります。「聖餐」「聖体拝領」などと呼ばれます。
ここだけは注意が必要です。礼拝に参加すること自体はどの教会でも歓迎されますが、このパンとぶどう酒を受け取れるのは、洗礼を受けた人に限られるのが一般的です。しかも基準は教会ごとに違い、たとえばカトリックのミサでは、ほかの教派で洗礼を受けた人も原則として対象外です。
はじめての人は、席に座ったままで大丈夫です。無視していると思われることはありません。カトリック教会では、信者でない人にも祝福を授けているところがあります。
迷ったら、列に並ぶ前に案内の人に「初めてです」と伝えれば確実です。カトリック中央協議会も、はじめて来た人には「初めて来た」と伝えるよう案内しています。
教会で見かける「あれ」は何?
はじめて教会に入ると、見慣れないものがいくつか目に入ります。意味を知っておくと、こわさはだいぶ減ります。
なぜみんなで歌うの? 礼拝で歌う歌(賛美歌・聖歌・ワーシップソング)は、コンサートではなく、神に向けて歌う歌です。うまい下手はまったく関係ありません。歌うこと自体が祈りのようなもの、と考えられています。はじめての人は聞いているだけで大丈夫です。
なぜ長い話(説教)を聞くの? 聖書は2000年ほど前に書かれた本なので、そのまま読んでも現代の生活と結びつきにくいところがあります。説教は、牧師や神父が聖書の言葉を「いまの自分たち」につなげて話す時間です。講義というより、「この古い言葉は、今日のあなたにとって何の話か」という翻訳に近いものです。
なぜ処刑の道具がシンボルなの? 十字架は、イエスが処刑された道具です。ふつうなら隠したくなるはずのものを堂々と掲げているのは、そこで起きたこと(イエスの死と復活)こそが信仰の中心だからです。ちなみに十字架にイエスの像が付いているのはカトリックに多く、プロテスタントは十字架だけのことがほとんどです。
マリア像を拝んでいるの? マリアはイエスの母です。ときどき「カトリックはマリアを拝んでいる」と言われますが、カトリック教会自身がそれを否定しています。カトリック中央協議会は「聖母マリアや聖人は神ではありません」と明記していて、マリアへの敬意(崇敬)と、神への礼拝は別のものだと説明しています。
胸の前で手を動かしている人がいるけど? 「十字を切る」しぐさです。カトリックと正教会に見られる習慣で(順序は教派で違うとされます)、プロテスタントでは一般的ではありません。真似しなくてまったく問題ありません。
「キリスト教」を名乗る別の団体もある
歴史ある主流のキリスト教会(カトリック・正教会・聖公会・プロテスタント諸教派)とは別に、キリスト教を名乗りながら独自の教えを持つ団体もあります。主流の教会は、それらを自分たちと同じキリスト教とは考えていません。
ただ、教えの違いで見分けるのは、はじめての人にはほぼ無理です。もっと実用的な目安があります。
日本脱カルト協会は、こう書いています——正当な宗教団体は、勧誘のときに名称を偽ったり、サークルを装って勧誘したりすることはない。
つまり、最初に正体を名乗るかどうか。これがいちばん現実的な見分け方です。くわしくは「自分に合う教会のえらび方」へ。
理解するより、体感してみてください
ここに書いたのは、行く前に知っておくと安心な、最低限の前提です。ただ、信じている人によく言われるのは、キリスト教は頭で理解するものというより、体感するものだということです。説明を読むのと、実際にその場の空気を感じるのとでは、伝わってくるものがまるで違います。
ここに書ききれなかった細かいところは、実際の教会で、牧師や神父、まわりの人がその場でていねいに教えてくれます。気になったら、ぜひ一度のぞいてみてください。東京の教会一覧から、行きやすい場所をさがせます。
次に読むなら
- カトリックとプロテスタントのちがい — 行ったときの雰囲気がどう違うか
- 教会の一年 — クリスマスとイースターの話
- はじめて教会に行く日の流れ — 服装・持ち物・当日のこと
参考にした資料
- 最も重要な戒め(マタイによる福音書22章34-40節)/「神は愛です」(ヨハネの手紙一4章8節)・新約聖書
- イエスへの言及・タキトゥス『年代記』15巻44章(115年ごろ)/ヨセフス『ユダヤ古代誌』(1世紀末)
- Best-selling book・Guinness World Records
- How the Global Religious Landscape Changed(2020年時点でキリスト教徒23億人・世界人口の28.8%)・Pew Research Center
- 使徒信条/ニケア・コンスタンチノープル信条・カトリック中央協議会
- 信者でなくてもミサに参加できますか・カトリック中央協議会
- 聖母マリアやそのほかの聖人も神様ですか・カトリック中央協議会
- 旧約聖書続編とは/聖書の選び方・日本聖書協会
- 「堅信前の陪餐」関係諸文書・日本聖公会
- 教規 第6章・日本基督教団
- 正教会とは・日本ハリストス正教会
- カルトについてのQ&A・日本脱カルト協会
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